大弛峠 大弛峠
標高
2360m
経路
山梨県東山梨郡牧丘町
 〜 長野県南佐久郡川上村
 奥秩父山地は東京都の雲取山から長野県の飯盛山までを主脈とする広大な山塊です。主脈を構成している山々のほとんどが標高2000m以上であり、高度は多少及ばないものの、南北中央アルプスに対してここを東アルプスと呼ぼうという声もあるくらいです。そんな山深い所なので、他の日本アルプス同様、奥秩父連峰の険しい山々を車で越えられる峠は少なく、信州峠と最近トンネルが開通してやっと越えられるようになった雁坂峠の他にはここ大弛峠を数えるのみとなっています。大弛峠は標高2360m。むしろ、こんな標高の峠まで車道が通じていることに驚かされます。
 
 9月後半の連休は晴れの予報。そこで、以前訪れたときには曇り空で展望に恵まれなかった大弛峠を目指すことにしました。夜0時に自宅を出て道の駅「甲斐大和」で仮眠、早朝目が覚めると雲一つ無い快晴。絶好の峠越え日和となりました。
 
 山梨県から大弛峠を目指すには、塩山市から県道210号線(杣口塩山線)を進みます。道は直線的で、両側には葡萄畑が広がっていました。広大な葡萄畑はこの辺りの代表的な風景です。
 
県道210号 杣口塩山線
県道210号 杣口塩山線
 そんなのどかな風景も過ぎ、道は徐々に人里を離れて山の中へと入っていきます。琴川の小さな流れを渡ったところで県道は終わり、そこから先は杣口林道と名が変わります。幅員1.5車線の山道ですが全面舗装の走りやすい道です。時折展望が開ける所があって、朝日の中に富士の姿が浮かんでいました。
 
杣口林道起点
杣口林道起点
 
富士遠景
富士遠景
 
柳平
柳平
 柳平まで来ると道は突然2車線の快走路に変わり、山間に小さな集落が現れます。林道に入れば人の気配はどんどん薄くなり、あとは山中の一本道と思い込んでいたので、唐突に現れたこの空間には意表をつかれました。この柳平地区は標高1500m。昭和20年代に切り開かれた新しい土地だそうです。
 
 写真の地点より左側、このときはダム建設工事の最中でした。あとで調べてみると建設中のダムは琴川ダムで平成19年完成予定。完成すれば多目的ダムとしては日本最高所のダムになるのだとか。
 
 ちなみに柳平からは乙女高原方面へも道が分岐しています。そこから更に、いくつかの林道を繋いで走れば清里まで行くことが出来るのですが、この道には「クリスタルライン」という名前がつけられています。この辺りで産出された水晶にちなんでつけられた名前のようです。林道ではありますが全線舗装されており、普通車でも問題なく走れるドライブコースとなっています。紅葉の頃はなかなかのものです。
 
川上牧丘林道ゲート
川上牧丘林道ゲート
金峰山の五丈石
金峰山の五丈石
 さて、柳平を過ぎたところが杣口林道の終点、ゲートがあって、その先から道は川上牧丘林道と更にその名を変えます。以前来た時にはここから少しダートが残っていましたが、今回綺麗に舗装されていました。アスファルトも新しく気分良く走れる林道です。高度が上がるにつれて展望もよくなり、左に目をやると金峰山と特徴的な五丈石がすぐそこに見えます。
 
 金峰山の稜線に沿って視線を右に移すと目指す峠の鞍部が確認できます。長いアプローチでしたが、道路が整備されていることもあって案外あっさりと峠に到着することが出来ました。しかし、道路には崩れた小石が散らばっており、山肌はいかにも脆く簡単に崩れそう。頻繁に整備しないとあっという間に荒れ果ててしまいそうです。隠されているだけで、素顔はやはり険しい峠道なのだと思います。
 
鞍部が峠
鞍部が峠
 
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大弛峠
峠は車また車
 到着した峠は登山者のものと思われる車で一杯でした。人ごみが苦手な自分としては、この状況に少々うんざり。結局、長野県側の未舗装路に車一台分のスペースを見つけ、どうにか駐車することが出来ました。まだ朝の7時半だというのに・・・。
 
 しかし、車からおりて周囲を見渡すと意外なことに人影はまばら。どうやら車の持ち主はとっくに山の中らしく、無人の車だけが行儀良くお留守番しているもののようです。
 
 
 大弛峠を越える川上牧丘林道は昭和四十四年開通の車道です。幾多の峠を開いてきた信州においても新しい峠道の一つといえます。峠の標高は2360mで、これは車道の峠としては日本最高所ということになります。峠周辺には金峰山・国師ヶ岳・北奥千丈岳といずれも2500mを越える山々が取り囲んでいる訳ですから日本最高所というのも納得です。というより、この辺りは奥秩父山地の中でも特に標高が高い地域、よくもまあこんな所に道を通したものです。
 
 
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 標高は高いところにありますが、峠からの眺望はそれほど優れているわけではありません。景色を見るなら、大弛峠から15分登った先にある「夢の庭園」と名づけられた場所がおすすめです。
 
 整えられた木段を登って夢の庭園へ。大きな岩が露出した庭園風の場所からは、金峰山をはじめとして遠く南アルプスまでも一望することができます。
 
夢の庭園へ
夢の庭園へ
 
 夢の庭園には先客が一人いましたが、自分と入れ替わりで国師ヶ岳へ登って行きました。それからはここを訪れる人もなく、景色をずっと独り占めでした。車道の開通によって誰もが気軽に立ち寄れるようになったとはいえ、景色以外何も無い峠へ誰もが訪れる訳ではないようです。勿体無いように思いますが、一方で峠は静かに超した事は無いとも思います。
 
夢の庭園からの展望
夢の庭園からの展望(画像クリックで拡大)
 
 
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峠から長野県側は未舗装
峠から長野県側は未舗装
 峠を境に長野県側の道は未舗装に変わります。大きな石がごろごろしたガレ道で、山梨県側の快適舗装路とは対照的です。
 
 ちなみに、私が最初に大弛峠を訪れた時、乗っていた車は軽自動車。しかもパジェロミニといった悪路も走れる車ではなく、完全街乗り車だったので未舗装路を前に進むか戻るか迷っていました。そんな脇を一台の軽トラックが通り過ぎて行き、なんだ軽トラでも大丈夫なのかと自分もその後に続いて進むことにしたのでした。
 
 しかしこれが大失敗。想像以上にでこぼこがひどく、何度も車の腹をこすったあげくに必死の思いで麓までたどり着いたのでした。
 
 今は車を乗り換え、こいつは悪路もそつなくこなしてくれます。ガタガタ道は相変わらずですが、前回の苦労が嘘のように、ストレス無く下りることができました。車が変われば道の印象もだいぶ変わるものですね。
 
ガタガタ道を下る
ガタガタ道を下る
川上村
峠を振り返って
 
 麓の周辺には高原野菜の畑が広がっていて実に長野県らしい。峠を境に山梨から長野へ県が変わるだけでなく、盆地から高原へ、舗装路から未舗装路へ、果樹園から高原野菜畑へ、いろいろと様子が変わるのが峠のおもしろさです。
 
 長野県側の未舗装区間もいずれ舗装される日がくるのかもしれません。しかし、個人的には大弛峠の個性の一つとして、ずっとこのままであって欲しいなと思うのでした。
 
 

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      大弛峠 訪問 2005/9
          登録 2007/12/23